券売機の前で、少しだけ手が止まった経験はないでしょうか。舎鈴の券売機には「小盛」「並盛」「大盛」「特盛」が横一列に並び、値段は100円ずつきれいに上がっていきます。つけめん専門店としては珍しいほど整理されたその表示は、裏を返せば「どれを選んでも失敗しない設計になっている」という宣言でもあります。
結論から言えば、舎鈴は超濃厚つけめんの代名詞である六厘舎の姉妹ブランドであり、その狙いは「行列に並ばずに、毎日でも食べられるつけめん」という一点に絞られています。だから麺量の刻みが細かく、だから駅ナカやオフィスビルの地下に店を構え、だから価格はつけめん並盛890円という日常の射程に収まっている。名店の血統でありながら、記念日の一杯ではなく平日の昼を担当する。それが舎鈴というブランドの正体です。
この記事では、公式おしながきと運営会社の発表資料をもとに、舎鈴の成り立ち、サイズと価格の設計思想、メニューの選び方、そして2026年に起きた資本の大きな動きまでを順に追いかけます。読み終えるころには、券売機の前で迷う時間がゼロになっているはずです。
・舎鈴と六厘舎の関係、そして「毎日食べられる濃さ」という設計思想
・小盛から特盛まで、麺量と価格がどう対応しているのかの全体像
・つけめん・らーめん・創業つけめんの違いと、失敗しない選び方
・松屋フーズホールディングスによる買収で、これから何が変わるのか
舎鈴とは何者か|行列店・六厘舎が生んだ「毎日食べられる」つけめん

超濃厚で行列を作った兄と、日常を狙った弟
舎鈴を理解する最短ルートは、兄にあたる六厘舎を知ることです。六厘舎は2005年4月18日、三田遼斉が東京都品川区大崎に大崎本店を開いたところから始まりました。ところが開店から数か月は客入りが少なく、危機的な状況に陥ります。そこで三田が理想としていた超濃厚スープ・極太麺へ一気に振り切ったところ、評判が評判を呼び、都内屈指の行列店へと変貌しました。待ち時間は基本的に約2時間、3連休ともなれば2時間30分以上に達することもあったと記録されています。
皮肉なことに、その人気が店の寿命を縮めました。行列が近隣の迷惑となり、大崎本店は2010年8月29日をもって閉店します。名店が「濃すぎる人気」に押し潰された格好です。ここで運営元が出した答えが、濃度と行列を引き算した別ブランド、すなわち舎鈴でした。六厘舎が「わざわざ並んで食べる一杯」なら、舎鈴は「並ばずに済ませる一杯」。同じ会社が、正反対の体験を意図的に作り分けたわけです。
公式が掲げるコンセプトも明快で、「毎日食べても飽きることがない。何度でも食べたい、クセになる味」。濃厚さを競うのではなく、飽きない着地点を探す。この一文が、舎鈴のスープ設計から店舗立地までを貫いています。

丼から立ちのぼる湯気、レンゲですくうスープ、ズルズルとすする一体感——私たちが「ラーメン」と呼ぶあの一杯には、実は近い親戚が二つ存在します。つけ麺と油そばです。…
2011年・赤羽から始まった駅ナカという戦場
舎鈴の1号店は2011年、赤羽に出店したと伝えられています。大崎の路面店で行列に苦しんだ直後のブランドが、最初に選んだのが駅ナカだったという事実は示唆的です。駅ナカは滞在時間が短く、回転が命で、行列が発生しにくい構造を持っています。行列を作らないことが目的なら、これ以上に理にかなった立地はありません。
その象徴であるエキュート赤羽店は、2025年6月23日に改装リニューアルオープンしています。ブランド最初期の店が10年以上を経て刷新されたという事実は、駅ナカ戦略が一過性の実験ではなかったことを物語ります。現在も公式店舗一覧には50店舗以上が掲載され、その多くが駅直結の商業施設、オフィスビルの地下、ショッピングセンターのフードコートに収まっています。
もう一つ見逃せないのが商圏の広がりです。運営会社は2024年に関西へ初進出し、大阪駅直結のKITTE大阪などにも舎鈴が並びました。東京の行列店の弟分が、看板を掲げずとも通用する土地を増やしている。「六厘舎の名前がなければ売れない」という段階を、舎鈴はすでに越えています。
ブランドを5つ回す会社の懐事情
舎鈴と六厘舎を運営するのは株式会社松富士食品です。創業は2005年4月18日、会社としての設立は2008年11月、代表取締役社長は瓦葺一利。事業内容は飲食店の運営と食品の製造販売で、従業員数はグループ連結・パートアルバイトを含めて2,574名(2026年6月時点)に達します。
同社が展開するのは舎鈴と六厘舎だけではありません。ラーメンのジャンクガレッジ、担々麺のトナリ、つけめんの次念序など、麺の周辺を細かく塗り分けるようにブランドが並びます。ジャンルを一つに絞らず複数の看板を持つのは、駅ビル・空港・フードコートといった区画ごとに求められる客単価と回転数が違うからです。同じ区画に六厘舎と舎鈴を同時に出すことはできませんが、看板を替えれば両方に出店できる。ブランドの多さは、そのまま出店可能な物件の多さになります。
沿革を見ると、同社は2024年に直営店100店舗を達成しています。個人の名店から始まった屋号が、20年弱で三桁の直営網に育った。その拡大を実務面で担ったのが、行列を作らない設計を持つ舎鈴だったという見方は、店舗数の分布からも自然に導けます。
年表で追う、兄弟ブランドの20年
ここまでの流れを時系列で並べると、舎鈴というブランドが「六厘舎の廉価版」ではなく、明確な課題解決として生まれたことがはっきりします。行列、近隣対応、多店舗展開という三つの宿題に対する回答が、そのまま舎鈴の形になっているのです。
- 2005年4月18日:三田遼斉が東京都品川区大崎に六厘舎 大崎本店を開業
- 2008年11月:株式会社松富士食品を設立
- 2009年6月17日:東京駅八重洲口の東京ラーメンストリートに六厘舎TOKYOを開店
- 2010年8月29日:行列が近隣の迷惑となり、大崎本店が閉店
- 2011年:舎鈴の1号店が赤羽に誕生したと伝えられる
- 2014年4月18日:六厘舎が大崎ウィズシティへ新規出店
- 2024年:直営100店舗を達成し、関西へ初進出
- 2025年:六厘舎が創業20周年を迎える
890円で麺300gという基準線|サイズと値段の設計を読み解く
100円ごとに麺が100g増える、階段のような価格表
宿題を一つずつ潰した結果として、舎鈴の券売機はきわめて読みやすい形に落ち着いています。基本のつけめんは小盛790円、並盛890円、大盛990円、特盛1,090円。100円刻みで四段階、しかもこの100円に対応する麺量は小盛200g・並盛300g・大盛400g・特盛500g(いずれも茹で前)が目安とされています。つまり100円払えば麺が100g増える。暗算が要らないほど単純です。
この単純さは偶然ではありません。つけめん専門店では「並盛が何gか」が店ごとにばらばらで、初訪問の客がサイズを選べないという問題が長年ありました。舎鈴は特盛の導入にあわせて6月26日から全店で麺量の表記を変更し、グラム数を明示する方向に舵を切っています。価格と麺量が一対一で対応していれば、客は「今日は腹七分」「今日はしっかり」と体調で選べるようになります。
ちなみに小盛の200gは、一般的なラーメン一杯の麺量とほぼ同じか少し多い程度です。つけめんの並盛300gが「多い」のではなく、ラーメンの一杯が150g前後という基準に慣れているからそう感じる。この感覚のズレを埋めるためにも、まずは並盛から入って自分の適量を測るのが現実的です。

「つけ麺はラーメンより健康的そう」——スープと麺が別々に出てくるあの見た目から、そう思い込んでいませんか。実はこれ、ラーメン好きが最もハマりやすい勘違いのひとつ…
大盛と特盛は「つけダレも増える」に変わった
サイズ選びで見落とされがちなのが、麺だけでなくつけダレの量も変わるという点です。舎鈴は2024年11月13日にこの部分へ手を入れ、大盛のつけダレを従来比1.5倍、特盛を従来比2倍へ増量しました。同時に、それまで提供されていた大盛・特盛のつけダレ無料おかわりサービスは終了しています(終了日は店舗によって異なるとされています)。
この変更は、つけめんという料理の弱点を突いた改良です。麺だけ増やすと後半でタレが薄まり、締めの数口が水っぽくなる。おかわりで補う方式は理屈としては正しいものの、卓上でスタッフを呼ぶ手間が発生し、回転の速い駅ナカ店とは相性が悪い。最初から必要量を出しておけば、客は席を立たずに完食でき、店は提供オペレーションを一つ減らせます。
失敗パターンとして多いのが、この変更を知らないまま「大盛はタレが足りなくなるから」と小盛や並盛に逃げてしまうケースです。逆に、旧来の感覚で「おかわりすればいい」と特盛を頼み、途中で追加を頼めずに慌てる人もいます。現在は増量済みが標準と覚えておけば、どちらの後悔も避けられます。
つけめんのタレが後半で薄まるのは、麺に付着した茹で水と、麺自体が抱えた水分がタレへ移るためです。麺量が増えるほど持ち込まれる水分も増えるので、大盛・特盛でタレを増やすのは味の設計として理にかなった判断といえます。
ラーメンもぎ調べ|サイズ別の価格と麺量を一枚にまとめる
公式おしながきと店頭メニューの表示を突き合わせ、主要4種のつけめんについてサイズごとの価格を整理しました。ここで見えてくるのは、どのメニューを選んでもサイズ間の差額が100円で固定されているという徹底ぶりです。トッピングの差額はメニュー名の側に織り込み、サイズの差額はどこまでも100円で通す。券売機の設計としてはかなり潔い部類に入ります。
| メニュー | 小盛(200g) | 並盛(300g) | 大盛(400g) | 特盛(500g) |
|---|---|---|---|---|
| つけめん | 790円 | 890円 | 990円 | 1,090円 |
| 味玉つけめん | 940円 | 1,040円 | 1,140円 | 1,240円 |
| 担々つけめん | 940円 | 1,040円 | 1,140円 | 1,240円 |
| 特製つけめん | 1,090円 | 1,190円 | 1,290円 | 1,390円 |

スープと麺はどこで生まれるのか|所沢の工場という答え

鶏豚と魚介を重ねるWスープの設計
舎鈴のつけダレは、鶏豚などの動物系素材と魚介を合わせたWスープに、キレのある醤油ダレを効かせた構成です。魚介の香りは立ち上がるものの、口の中を覆い尽くすほどの粘度はありません。レンゲですくうと、器の底が見える程度の透過感が残ります。
この設計は、六厘舎の超濃厚スープ・極太麺と対になっています。濃度を上げれば一杯のインパクトは増しますが、二日連続で食べたいとは思いにくい。逆に薄くすれば飽きは来ませんが、わざわざ専門店に来る理由が消えます。舎鈴が探しているのは、その間にある「明日も食べられて、なお専門店の顔をしている」一点です。公式が「毎日食べても飽きることがない」と言い切るのは、その一点を狙い澄ました結果と読めます。
実際に食べ進めると、序盤は魚介の香り、中盤から動物系の甘み、終盤に醤油のキレという順で表情が変わります。極端な濃度で最初から最後まで殴ってくるタイプではないぶん、麺量300gを走り切っても舌が疲れにくい。この「疲れにくさ」こそ、日常使いのチェーンにとって最も重要な性能です。
所沢のセントラルキッチンが支える「どこでも同じ味」
50店舗以上に同じ味を届けるには、仕込みの標準化が避けて通れません。松富士食品は埼玉・所沢にセントラルキッチンを構え、品質・衛生管理と、多様な立地フォーマットでの高い再現性を強みとしています。駅ナカの狭小店舗からフードコートの区画まで、厨房の広さがまったく違う場所へ同じ品質を配るための装置です。
この体制は、松屋フーズホールディングスが松富士グループを評価した理由の一つでもありました。買収に関する発表資料では、東京駅や羽田空港といった主要立地で培われた高い認知度と強固な顧客支持に加え、セントラルキッチンによる再現性が明記されています。ブランド力だけでなく、味を配る仕組みが資産として値付けされたわけです。
もっとも、セントラルキッチンは万能ではありません。麺の茹で時間、湯切りの強さ、タレの温度といった最終工程は各店の厨房に委ねられます。同じ舎鈴でも「あの店は麺が締まっている」と感じる差が出るのは、この最終工程の幅が理由です。
「セントラルキッチンの店は個人店に味で劣る」と語られがちですが、比較すべきは平均値ではなくばらつきの幅です。仕込みを集中させると当たり外れの下限が上がり、いつ行っても想定内の一杯が出てきます。毎日食べる前提のブランドにとって、この安定性は濃厚さより重要な性能になります。
チェーンなのに「幻の一杯」を復刻できる強み
標準化の話をすると、味の冒険ができなくなる印象を持たれがちです。ところが舎鈴は、六厘舎の創業当初にわずか1か月だけ提供されたという幻のつけめんを「創業つけめん」として復刻し、店舗限定で販売してきました。累計販売は20万食を突破しています。
復刻できる理由は、逆説的ですが工場を持っているからです。特定のタレを一定量だけ作り、限られた店舗へ配る。個人店が「昔の味を再現する」となれば仕込み一回分が丸ごとリスクになりますが、集中生産なら小ロットの配分で試せます。標準化は冒険を殺すのではなく、冒険の失敗コストを下げる方向にも働きます。
なお創業つけめんは全店で買えるわけではなく、KITTE大阪店など一部店舗では取り扱いがありません。目当てにする場合は、公式の新着情報で販売店舗の追加告知を確認してから足を運ぶのが確実です。

ラーメン店の看板に「製麺所」と書いてあったら、それは本来かなり重い意味を持つ言葉です。麺を仕入れるのではなく、自分の店で粉から麺を打つという宣言だからです。三田…
舎鈴のメニューは「4つのつけめん」で覚える
基本形・味玉・担々・特製という4本の柱
公式のおしながきに並ぶつけめんは、つけめん/特製つけめん/担々つけめん/創業つけめんという顔ぶれです。ここに味玉つけめんを加えた4系統で考えると、選択が一気に楽になります。基本形のつけめんは並盛890円。まず食べるべき一杯であり、他のメニューはすべてここからの足し算です。
味玉つけめんは並盛1,040円。基本形との差は半熟の味玉一つ分ですが、つけダレに黄身を落とせば後半の味変になります。担々つけめんも並盛1,040円で、こちらは方向性がまるごと変わるタイプ。魚介の香りに胡麻と辛味が重なり、同じ店の同じ麺とは思えない表情を見せます。
頂点に立つのが特製つけめんで、小盛1,090円、並盛1,190円、大盛1,290円、特盛1,390円。チャーシューや味玉などを盛り込んだ全部入りに相当します。単品でトッピングを積み上げるより、最初から特製を選んだほうが結果的に整理しやすい場面が多くなります。
つけめんの陰に隠れた、らーめん側の選択肢
専門店を名乗っていても、舎鈴には汁ありの一杯があります。らーめんは並盛790円、大盛890円。つけめんの基本形より100円安く、サイズも二段階に絞られています。味玉らーめんは並盛940円、大盛1,040円です。
つけめんとらーめんでは、そもそも麺との向き合い方が違います。つけめんは冷水で締めた麺を濃いタレに潜らせる料理で、麺の弾力が主役。対して汁ありは、スープを吸いながら食べ進める料理で、温度が主役になります。冬場の朝や、体調が本調子でない日には、迷わず汁ありを選ぶ人も少なくありません。
店舗によっては、らーめんの枠が中華そばとして表示されている場合もあります。券売機のボタン名は各店で更新されるため、汁ありを狙う日は入口の券売機を一度上から下まで眺めてから押すのが安全です。サイドのぎょうざは340円で、麺だけでは物足りない日の緩衝材になります。
| 項目 | つけめん | らーめん |
|---|---|---|
| 基本価格(並盛) | 890円 | 790円 |
| サイズ展開 | 4段階(小〜特盛) | 2段階(並・大) |
| 麺の状態 | 冷水で締めた麺 | 熱いスープの中 |
| 向いている場面 | しっかり食べたい昼 | 寒い日・軽く済ませたい日 |
店舗限定「創業つけめん」を狙うなら
創業つけめんは、六厘舎の創業当初にわずか1か月だけ提供されたつけめんを舎鈴で復刻した一杯です。鶏豚などの動物系と魚介を合わせたWスープにキレのある醤油ダレを効かせ、さらに特製スパイスでパンチを加えたつけダレが特徴とされています。価格は小盛790円程度から、チャーシュー入りは小盛990円程度で案内されてきました。
注意したいのは、これが常設ではなく店舗限定メニューだという点です。販売店舗は段階的に追加されており、公式の新着情報でも「販売店舗追加のお知らせ」という形で告知が重ねられてきました。裏を返せば、行った店で扱っていない可能性が常にあるということです。
累計20万食という数字は、限定メニューとしては大きな部類に入ります。基本のつけめんを一度食べたうえで比べると、スパイスの効き方の違いがはっきり分かるので、二杯目以降の楽しみとして取っておくのが賢い順番です。
トッピングは「積む」より「特製に乗り換える」
券売機にはトッピングのボタンも並びます。公式のおしながきに掲載されているのは、特製盛り・チャーシュー・味玉・メンマ・ほうれん草・ねぎ増し・ライス・ぎょうざといった顔ぶれです。
ここで起きがちなのが、味玉とチャーシューを個別に足していった結果、特製つけめんの価格を超えてしまうという事故です。基本形とのメニュー間差額を先に把握しておけば、二つ以上足したい日は最初から特製を押したほうが早いと判断できます。味玉一つだけでいい日は味玉つけめん、盛り沢山にしたい日は特製、という二択で考えると迷いません。
ねぎ増しやほうれん草のような野菜系は、味の方向を変えずに食感だけ足せる点が便利です。とくにねぎは、後半で単調になりがちなつけダレに香りの立ち上がりを戻してくれます。締めの数口の満足度を上げたい人は、麺を大盛にするより先にこちらを試す価値があります。
朝440円の一杯が存在する理由|時間帯で変わるもう一つの顔
出勤前を狙う、朝メニューという発明
舎鈴の一部店舗には、朝の時間帯だけ登場するメニューがあります。素ラーメンが440円程度、朝らーめんが540円程度で、いずれも朝10時までの販売とされています。つけめんの並盛890円と比べると、半額前後の価格帯です。
この価格が成立するのは、朝という時間帯の性質によります。昼のピークと違って回転を詰める必要がなく、仕込み済みのスープと麺があれば追加コストはほとんど発生しません。空いている厨房と席を遊ばせるくらいなら、原価に近い価格でも客を入れたほうが得になる。牛丼チェーンの朝定食と同じ理屈が、つけめん専門店にも持ち込まれた形です。
食べる側から見れば、これは日常の選択肢が一つ増えたことを意味します。出勤前に温かい汁ありを一杯、しかもワンコイン前後で。オフィス街や駅ナカに店を置いてきた舎鈴だからこそ成り立つ商売であり、駅ナカ戦略の副産物と言ってもいい存在です。
朝メニューは全店で提供されているわけではありません。オフィス街や駅ナカの一部店舗に限られ、内容や販売時間も変更される場合があります。狙って行く日は、公式サイトの店舗情報で営業時間を確認してから向かうのが確実です。
昼・夜・週末、時間帯で顔が変わる
舎鈴の面白さは、同じ看板でも時間帯によって客層と使われ方がまるで違うところにあります。平日昼のオフィス街の店は、券売機から着席、完食、退店までが淀みなく流れる回転重視の空間です。券を買う前にメニューを決めておかないと、後ろの列に押される感覚を味わうことになります。
夜になると様相が変わります。仕事帰りに一杯だけ、あるいは飲んだ後の締めとして立ち寄る人が増え、麺量も大盛や特盛が動きます。深夜まで営業する店では、この締め需要が売上の柱になっているケースもあります。
週末はさらに別の顔です。ショッピングセンターやフードコートに入る店は家族連れが中心となり、お子様メニューを置く店舗も出てきます。同じブランドが、平日は単身のビジネスパーソン、週末は家族の食卓を担当する。この二毛作こそ、多店舗展開のブランドが取りうる強みです。
失敗パターン|日祝の早じまいを知らずに空振りする
舎鈴で最も起きやすい失敗が、営業時間の読み違いです。とくにオフィスビルに入る店舗は、平日と土日祝で終業時刻が大きく変わります。たとえば丸の内店は月〜金が11:00-23:00(L.O. 22:30)である一方、日祝は11:00-17:00(L.O. 16:30)まで。東京サンケイビル店も月〜金は11:00-22:00(L.O. 21:30)ですが、日祝は11:00-17:00(L.O. 16:30)です。
「平日に行けたのだから休日も大丈夫だろう」という発想でビルの地下へ降り、シャッターの前で立ち尽くす。オフィス街の飲食店では珍しくない光景ですが、休日にわざわざ足を運んだ後だけに落胆は小さくありません。対策は単純で、土日祝に行くなら早めの時間に入ること。同じ舎鈴でも、駅前の路面店やフードコート店は週末のほうが長く開いている場合があります。
もう一つの対策は、行き先を一店に絞らないことです。都心部なら徒歩圏に別の舎鈴があることも多く、営業時間のタイプが違えば片方が閉まっていても救われます。公式の店舗一覧で近隣店を二つ確認しておくだけで、空振りの確率はかなり下がります。
都心で入りやすい4店を、使い方から選ぶ
丸の内店|夜の遅い時間まで頼れるビル地下
丸の内永楽ビルディングの地下1階に構える店舗で、席数は30席(土日は26席)。平日は夜遅い時間帯まで営業しており、残業帰りの一杯に対応できる貴重な立地です。東京駅周辺で夜に舎鈴を探すなら、まず候補に挙がります。
一方で日祝は夕方前に終わるため、休日の観光や買い物のついでに寄る場所としては向きません。平日夜の受け皿、と割り切って使うのが正解です。オフィスビルの地下という性格上、平日昼は近隣で働く人で席が埋まりやすく、時間をずらせるなら14時前後が狙い目になります。
| 住所 | 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-4-1丸の内永楽ビルディングB1 |
| 電話番号 | 03-6269-9567 |
| 営業時間 | 月〜金 11:00-23:00(L.O. 22:30)/土 11:00-21:30(L.O. 21:00)/日祝 11:00-17:00(L.O. 16:30) |
| 公式サイト | 公式サイト |
東京サンケイビル店|41席のゆとりで待ち時間を避ける
大手町の東京サンケイビル地下1階にある店舗で、席数は41席と紹介した4店の中で最も多い規模です。席数が多いということは、それだけ行列の消化が速いということでもあります。昼のピークにぶつかっても、外まで並ばずに済む可能性は高くなります。
営業時間は月〜金が11:00-22:00(L.O. 21:30)、土曜が11:00-20:00(L.O. 19:30)、日祝が11:00-17:00(L.O. 16:30)と段階的に短くなる設定です。大手町という立地の性格がそのまま時刻表に出ています。つけめんに加えて中華そばの表示もあり、汁ありを狙いたい日にも選択肢を残せる店舗です。
| 住所 | 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-2東京サンケイビルB1F |
| 電話番号 | 03-3527-9667 |
| 営業時間 | 月〜金 11:00-22:00(L.O. 21:30)/土 11:00-20:00(L.O. 19:30)/日祝 11:00-17:00(L.O. 16:30) |
| 公式サイト | 公式サイト |
池袋東口店|17席の小箱を回転で捌く
南池袋にある店舗で、席数は17席とコンパクト。営業時間は11:00-23:00(L.O. 22:30)で年中無休です。曜日による短縮がないため、休日に確実に食べたい人にとってはビル内店舗より読みやすい選択になります。
席数が少ないぶん、昼と夜のピークには並ぶ可能性があります。ただしつけめんは提供が速く、客側の滞在時間も短いため、行列の見た目ほど待たされないのがこの業態の特徴です。テイクアウトにも対応しており、近隣で持ち帰って食べるという使い方もできます。お子様メニューの取り扱いもあるため、家族での立ち寄りにも対応可能です。
| 住所 | 〒171-0022 東京都豊島区南池袋1-23-11 |
| 電話番号 | 03-6914-2646 |
| 営業時間 | 11:00-23:00(L.O. 22:30) |
| 定休日 | 年中無休 |
| 公式サイト | 公式サイト |
亀戸駅東口店|25席、年中無休の下町拠点
亀戸の駅前に位置する25席の店舗で、営業時間は11:00-22:30、こちらも年中無休です。オフィス街の店舗と違って曜日で終業が動かないため、週末に予定を組みやすい一軒といえます。
テイクアウトのほか、出前館・Uber Eats・Rocket Nowといったデリバリーにも対応しており、自宅で舎鈴のつけめんを食べるという選択肢も用意されています。つけめんは麺とタレが別容器になるぶん、デリバリーとの相性が汁ありより良い料理です。雨の日に外へ出たくないとき、この選択肢を知っているかどうかで満足度が変わります。
| 住所 | 〒136-0071 東京都江東区亀戸6-57-22 |
| 電話番号 | 03-5858-6246 |
| 営業時間 | 11:00-22:30 |
| 定休日 | 年中無休 |
| 公式サイト | 公式サイト |
| 店舗 | 席数 | 曜日による短縮 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| 丸の内店 | 30席 | あり | 平日夜の締め |
| 東京サンケイビル店 | 41席 | あり | 平日昼を待たずに |
| 池袋東口店 | 17席 | なし(年中無休) | 休日・夜遅め |
| 亀戸駅東口店 | 25席 | なし(年中無休) | 週末・デリバリー |
91億円の買収で、つけめんの次の10年が動き出す
牛丼の松屋が、つけめんを丸ごと買った日
2025年12月15日、松屋フーズホールディングスが株式会社松富士の全株式を取得すると発表しました。取得価額は91億円、完全子会社化の効力発生は2026年1月5日付です。舎鈴と六厘舎を運営する松富士食品は、この日を境に牛丼チェーンを抱える上場企業グループの一員になりました。
買収時点の松富士グループは、全9ブランド・120店舗を関東ドミナントで展開(2025年11月末時点)。2025年6月末時点の連結売上高は100億600万円、連結営業利益は4億300万円でした。個人の一杯から始まった屋号が、20年で三桁億円規模の事業体になっていたことになります。
発表資料で評価されたのは、東京駅や羽田空港といった主要立地で培われた高い認知度と強固な顧客支持、そして所沢のセントラルキッチンが支える品質管理と、多様な立地フォーマットでの高い再現性でした。行列店の看板だけでなく、行列を作らずに味を配る仕組みが値付けの対象になったという読み方ができます。
なぜ牛丼チェーンがつけめんを欲しがるのか
松屋フーズ側の狙いは、麺類事業の拡充によるグループの成長加速だと説明されています。牛丼業態は市場が成熟し、価格競争の余地も限られます。一方でラーメン・つけめんは客単価を上げやすく、専門店としてのブランド価値が価格を支える構造を持っています。
ここで効いてくるのが、舎鈴が持つ「日常の顔」です。六厘舎は看板としては強力ですが、行列前提の業態を全国に量産することはできません。対して舎鈴は駅ナカ・オフィスビル・フードコートに収まる設計で、既に50店舗以上を並べる実績がある。多店舗展開のノウハウという意味では、買われた資産の中核は舎鈴側にあるとも言えます。
逆張りの見方をするなら、この買収は「六厘舎が売られた」のではなく「毎日食べられるつけめんの量産技術が売られた」出来事です。ラーメン店の買収というと看板の争奪戦を想像しがちですが、実際に評価されているのは工場と店舗網とオペレーション。舎鈴という地味な弟分が、この取引の主役だったという読み方は十分に成り立ちます。
値段と味はこれからどうなるのか
読者にとって最大の関心事は、つけめん並盛890円という価格が維持されるかどうかでしょう。現時点で公表されているのは資本と組織の話であり、価格やレシピの変更に関する発表はありません。舎鈴は2025年6月に六厘舎創業20周年の企画として、つけめん並盛を通常890円から100円引きにするキャンペーンを実施しており、その告知で通常価格が890円であることも確認できます。
ただし、飲食業界全体で原材料費と人件費が上がり続けている以上、価格が永久に固定される保証はどこにもありません。訪問前に公式サイトのおしながきを確認する習慣は、これまで以上に意味を持つようになります。
味の面では、大規模グループの調達力が品質にプラスに働く可能性もあれば、標準化がさらに進む可能性もあります。どちらに転ぶにせよ、判断材料は自分の舌です。買収前後の一杯を比べられるのは、いま食べている人だけが持てる特権と言えます。
松富士食品が展開するのは舎鈴・六厘舎だけではなく、ラーメンのジャンクガレッジ、担々麺のトナリ、つけめんの次念序なども同じ会社の看板です。フードコートで別々のブランドだと思って食べ比べた二杯が、実は同じ工場から来ていた——ということも起こり得ます。
まとめ|舎鈴は「並ばないための名店」だった
舎鈴を一言で言えば、並ばないことを目的に設計された名店の弟分です。兄である六厘舎が超濃厚スープと極太麺で2時間待ちの行列を作り、その行列ゆえに大崎本店を閉じたという歴史があるからこそ、舎鈴は駅ナカへ向かい、麺量を100g刻みで刻み、100円単位で価格を並べました。派手さはありませんが、その一つひとつが「明日もまた食べに来られるように」という設計思想から生まれています。
最初の一歩としては、近くの舎鈴でつけめんの並盛890円を頼んでみてください。300gの麺を食べ切ったときに「もう少しいけた」と感じたら次は大盛、「重かった」と感じたら次は小盛。二杯目からは、自分の体調に合わせてサイズを選べるようになります。そこまで来れば、券売機の前で迷う時間はもうありません。
なお、価格・メニュー・営業時間は変更される場合があります。訪問前に舎鈴 公式おしながきおよび公式店舗一覧、運営会社の株式会社松富士食品 企業情報で最新の内容をご確認ください。買収に関する詳細は松屋フーズホールディングスの発表資料、創業つけめんについては松富士食品のプレスリリースが一次情報です。

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